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安部公房×上村聡史「城塞」、山西惇「怖いくらい今の日本に通じる」

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かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.2「城塞」より。左から辻萬長、山西惇。(撮影:谷古宇正彦)

かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.2「城塞」より。左から辻萬長、山西惇。(撮影:谷古宇正彦)

「城塞」が4月13日に東京・新国立劇場 小劇場にて開幕。30日まで上演中だ。

本作は、日本近代演劇の礎となった3作品を、30代の気鋭の演出家3人が連続で上演する「かさなる視点―日本戯曲の力―」シリーズの第2弾。三島由紀夫×谷賢一「白蟻の巣」に続き、安部公房の戯曲を上村聡史が演出する。

宙吊りになった死刑囚による極東裁判のシーンから幕を開けると、舞台は邸宅内にある、廃れた一室へ。“拒絶症”によって自分の中の時間を止めてしまった戦争成金の父(辻萬長)とその息子(山西惇)は、従僕(たかお鷹)や妻(椿真由美)、ストリッパーの若い女(松岡依都美)を巻き込んで、“儀式”と呼ばれる17年前のある日を再現する芝居を繰り返そうとするが……。

高圧的な軍服姿からふんどしの四つ這い姿まで、対照的な父親像を自在に演じ分ける辻萬長と、それに対峙する息子の心境をテンションのある芝居で演じきる山西惇。椿真由美は両者に挟まれながら己の正義を主張する妻役を嫌味なく演じた。たかお鷹は彼らを見守る、従順ながらも裏のある従僕役で魅せ、ストリッパーの若い女を演じた松岡依都美は、客席までも化粧とウイスキーの混ざった匂いを漂わせるような色気を振りまく。

安部の中期作品にあたる本作は戦後17年が経った1962年から敗戦を描いているが、セットのカーテンの向こうには、現代と思しき夜景のビル群が。配置された劇場を思わせる椅子や、錯視を誘う舞台美術、父を閉じ込めている部屋の不自然なドアなど、劇中劇が見どころとなるこの作品において、「どこまでが劇中劇なのか」という疑問を観客に常に抱かせる。「さあ、こわれてしまうんだ!」と叫ばれる圧巻のラストシーンは必見だ。予定上演時間は、休憩ありの約2時間25分。

なお「かさなる視点―日本戯曲の力―」シリーズのラストを飾る第3弾、田中千禾夫作、小川絵梨子演出「マリアの首 -幻に長崎を想う曲-」は、5月10日から28日まで新国立劇場 小劇場 THE PITにて上演。ステージナタリーでは、新国立劇場「かさなる視点―日本戯曲の力―」の特集を展開中だ。シリーズ企画者・演劇部門芸術監督の宮田慶子と上村、そしてキャストの山西惇と辻萬長が作品への意気込みを語っているほか、小川のコメントを掲載している。

※特集記事へはこちらから!
「かさなる視点」上村聡史&宮田慶子 _ 小川絵梨子 (1_4) - ステージナタリー 特集・インタビュー

山西惇コメント

私が生まれた1962年、戦後17年目に初演された作品ですが、怖いくらい今の日本にも通じる物語です。私が演じる戦争成金の「男」は、父の代から続く事業を引き継ぎさらに大きくしながらも、罪の意識に苛まれ続けている。戦争が人の心に残す傷の大きさ、深さを思わずにはいられません。…とはいえ、安部公房らしいシュールな喜劇性も存分に盛り込まれていますので、大いに楽しんでいただけるのではないかと思います。

※辻萬長の「辻」は一点しんにょうが正式表記。

かさなる視点―日本戯曲の力― Vol.2「城塞」

2017年4月13日(木)~30日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場

作:安部公房
演出:上村聡史
出演:山西惇椿真由美松岡依都美たかお鷹辻萬長

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